Future Voice Vol.3 「ハイパー・パーソナライゼーション」がモビリティと生活をシームレスにつなげる

2024.03.08
#voice

生成AIとクラウドコンピューティングは、モビリティの創造性とパーソナライゼーションを向上させる無限の可能性を秘めている──。マイクロソフトのコーポレートバイスプレジデントであるJessica Hawk(ジェシカ・ホーク)氏は、連携を発表した「CES® 2024」でそう語った

Kawanishi_and_Jesicca

マイクロソフト コーポレートバイスプレジデント
データ、AI、デジタルアプリケーション、プロダクトマーケティング
ジェシカ・ホーク

──CES 2024の発表ではパーソナライゼーションが強調されていました。コンテンツのパーソナライゼーションはすでに私たちの身の回りの製品に実装されていますが、さらにどのような進化が加わっていくのでしょうか?
私たちが掲げているのはデータに基づく緻密なパーソナライゼーション、いわゆる「ハイパー・パーソナライゼーション」です。人々が長らく追い求めてきたこの夢が、生成AIとクラウドコンピューティング、そして最先端のデータマネジメント技術の組み合わせによって、初めて真の意味で実現されようとしています。
この分野は今後数年で大きな飛躍が見られるでしょう。そして今回の連携によって、マイクロソフトやOpen AIが開発した最新の技術がAFEELAにも生かされることになったのです。

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──具体的にどのような体験が考えられますか?
マイクロソフトの「Azure OpenAI Service」で使われているのは、映像や音声といった異なる種類の情報をまとめて扱えるマルチモーダルなモデルです。つまり、音楽や映画を“見聞きして”学習できるということですね。例えばこれをソニーがもつ音楽や映画、ゲームの壮大なコンテンツライブラリと組み合わせたら、無限の可能性が生まれます。もちろん「今日は悲しい気分だから、元気が出る音楽が聞きたい」と話しかけ、アップテンポな曲を再生してもらうといったリコメンドは現在の技術でも可能です。しかし、その元になっているのは多くの場合は人の手によるラベリングですよね。それぞれのコンテンツをAIに分析させれば、ラベリングだけではこぼれ落ちてしまうニュアンスも拾い上げた、さらに細かなパーソナリゼーションが実現されます。

──クルマの外でのデータも生かされるようになるのでしょうか?
そうした可能性も考えられますね。私はビヨンセの大ファンなのですが、私が家で映画『Renaissance: A Film by Beyoncé』を観ていたことにAIが気づき、買い物に行くクルマで自動的に彼女のアルバムを流してくれたらさぞ嬉しいだろうと思います。あるいは、AIがユーザーの仕事のスケジュールを見て、自動的に次のミーティング先に行先を設定してくれるといったことも可能になるかもしれません。そんなふうにクルマの中と外がシームレスにつながる体験が、AFEELAによって実現されるのではないでしょうか。

──仕事でもプライベートでも幅広い可能性が広がっていますね。
応用の方法はいくらでもあると思います。一方で、その実装先がクルマである以上、最優先されるべきは安全性です。ドライバーが道路に集中できることが第一であり、そのためにも音声によるインタラクションは有効だと信じています。そしてもちろん、AIにおいても安全性が最優先されるべき事項であることは言うまでもありません。だからこそ、私たちは入念なテストサイクルと評価、そして透明性の確保を何よりも大切にしています。また、ハイパー・パーソナライゼーションやシームレスな体験においては、データプライバシーやセキュリティへの投資を怠りません。その点では、私たちがこれまで積み上げてきた実績に誇りをもっています。

──最後に、Hawkさんご自身がAFEELAに期待する体験を教えて下さい。
オンラインの世界を深く理解するようになるにつれ、人々の価値観も変化してきました。そうした変化のひとつが、普段使う物に自分のアイデンティティや個性を反映させたいという考え方の登場でしょう。クルマまでもが自分を表現するためのキャンバスになるのは画期的ですし、ゲームチェンジャ―になると感じます。

Interviewer: Takuya Wada
Writer: Asuka Kawanabe