Future Voice vol.6 AFEELAは「エンターテインメントの目的地」になる
自律走行機能やAIによるパーソナライズ機能を備えた次世代モビリティが実装された世界で、エンターテインメントの体験はどう変わるのか? AFEELAのパートナー企業であるOTTeraの最高経営責任者(CEO)を務めるStephen L. Hodge(ステファン・L・ホッジ)は、クルマが音楽や映画、ゲームを楽しむための「Entertainment Destination(エンターテインメントの目的地)」になると考えている。
「聖地巡礼」もタイムトラベルも自在に!?
──OTTeraは主にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
さまざまな企業やメディアが、FASTチャンネルやストリーミング・アプリケーションなどのサービスを開発し、立ち上げることができるクラウドベースのソフトウェア・プラットフォームを提供しています。
予めフレームワークが準備されているので、企業はゼロから開発することなく、デザインやユーザーインターフェイス(UI)をカスタマイズするだけでサービスを構築できます。また視聴者の属性や嗜好、視聴履歴に基づいて最適なコンテンツや広告を展開することも可能です。
これまで600以上のライブアプリケーションを運用し、2,000以上のFASTチャンネル(オンラインの広告付きの配信チャンネル)を世界中に配信してきました。AFEELAとのパートナーシップで、ユーザーはモバイルデバイスだけでなく、車内で数百ものストリーミングサービスを楽しめるようになるでしょう。
──AFEELAでは、OTTeraが運営する子ども向けチャンネル「Toon Goggles」の配信も計画されていますよね。
後部座席にいる子ども向けのコンテンツは、車内でのエンターテインメントコンテンツの中で最もニーズが高いのです。モビリティにおけるエンターテインメントのポートフォリオは子ども向けコンテンツがなければ完成せず、AFEELAでそれを最初に提供するというのは非常に理にかなっています。
──AFEELAとはAIによるパーソナライゼーション技術を進化させるための戦略的パートナーシップも発表しています。
移動ルートや時間、滞在場所などのデータを活用し、高度にパーソナライズされた映像コンテンツを楽しめるようになります。例えば、ロサンゼルスにいるときにサンタモニカやビバリーヒルズで撮影された、あるいはゆかりのある番組を視聴するといった体験も考えられます。
──聖地巡礼をしながらコンテンツを見られるわけですね。東京にいる場合は時代を超えて江戸の街並みを映し出すこともできるかもしれません。
そうですね。AIと移動データを組み合わせた体験に関しては、可能性は無限大といえるでしょう。
クルマが最高のエンターテインメント施設に
──さらに自動運転というレイヤーが加わったとき、映像の体験はどのように変わっていくでしょう?
音響・映像分野におけるソニーの、そしてモビリティにおけるホンダの歴史と技術は、自律走行車の時代のエンターテインメントを模索していくうえでまさに完璧な組み合わせです。開発者としてはAFEELAがもつ独自のスクリーンサイズや運転手や同乗者の双方が楽しめる体験を生み出すUIも、新しいエンターテインメントをつくるうえで魅力的です。
──いまの技術を考えると、スクリーンのない未来も非現実的ではないですよね。
仮想現実(VR)であれ、拡張現実(AR)であれ、はたまた複合現実(MR)であれ、これからのエンターテインメントは、間違いなくより没入度の高い、スクリーンの枠を飛び出した空間的な体験に向かっていくはずです。そこに自動運転が加わったとき、モビリティの体験も同じ方向に向かっていくでしょう。
映画館やビーチ、森、遠く離れた異国のどこか、あるいは宇宙や存在しない水中都市、時間を超えた過去の時代──。クルマに乗ることでまったく異なる世界に身を置くことができるかもしれません。それらは、クルマというひときわパーソナルで閉鎖的な環境だからこそ、極限まで没入可能な、拡張された体験になり得るのです。
──それがモビリティだからこその体験につながっていくかもしれませんね。
すでに目の前に200インチのスクリーンを投影できるXRデバイスの技術も存在しますし、閉鎖的な車内では究極のオーディオ体験を提供することも可能です。例えるなら、ソニーのヘッドホンのなかに座っているようなものかもしれません。「AFEELAの中でプレイステーションで遊びたい」と思うかもしれませんし、映画を観るために、あるいは最新のアルバムを聴くためにAFEELAに乗るかもしれない。つまり、クルマはクルマを超えて、エンターテインメントデバイスになっていく。A地点からB地点への移動を拡張していくだけでなく、AFEELAそのものがエンターテインメントの目的地として機能する可能性も秘めている。私はそう期待しています。
Interviewer & Writer: Takuya Wada
Editor: Asuka Kawanabe
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